私はもちろん日本皮膚科学会の会員ですし、何なら日本アレルギー学会の会員でもあります。学術大会もしっかり参加していますし、専門家中の専門家。それでも我が子のこととなると別! 焦る焦る…。普段の冷静な判断と豊富な知識は、緊急事態ではあっという間に飛んでいきます。
大丈夫だろうと思ってはいても、”こんなことで死なれてたまるか―”っと思って、すぐに、休日診療所に電話して、駆け込みましたー。
1.蕁麻疹(じんましん)とは
じんましんは、いわゆる蚊に刺されたようなプクッとした腫れと周囲の赤みが出ます。非常に痒いです。急性のものは、遅くとも24時間以内に消失します。重症だと、腹痛・下痢、呼吸困難、まぶたや唇の腫れが生じます。アナフィラキシーショックといって、血圧がグーンっと下がって意識消失してしまうこともある、怖い病気です。原因がはっきりしているものは15%ほどで、原因不明のものが8割近くあるといわれています。なので、皮膚科医としての日常診療でも、”何か心当たりがあれば、それが犯人だし、心当たりがなければ、原因探しても見当たらないから抗ヒスタミン薬などの定期内服で様子を見ましょう”、と言っています。、心当たりとは、30分~1時間以内に変わったものを食べたか、小麦製品を食べた後に運動をしたか、入浴したか、温度変化はあったか、などを事細かに問診します。
以前に勤務していた病院では皮膚科で食物負荷試験(食物チャレンジテスト)を実際に患者さんに施行していましたし、実際にアナフィラキシーショックが生じる様を見たこともあります。もちろん対応方法も熟知の上です。点滴を入れて、バイタルを定期的に測定しながらの万全のフォロー体制ですが、たったひとかけらの食品を口にしただけでアナフィラキシーショックになるです。なので、食物アレルギーは心して対応しないといけない疾患だなぁとは思っていました。
2.1回目の娘ちゃんの症状@こども園
1回目は園での給食で、初めてアジを食べた時です。お迎えの時に先生が、”給食の時に顔を手に蕁麻疹が出て、30分くらいで引いてきて、お昼寝後にはすっかり消えていた”と、写真を見せてくれました。写真はデジカメを印刷したもので画質がかなり荒かったのですが、確かに蕁麻疹と思われる皮疹でした。その日に食べた変わったものは、オクラと納豆の和え物、アジの南蛮焼きでした。オクラと納豆は以前にも提供されていたので、オクラなどのネバネバを触って出たのか、アジで出たのか不明でした。
よくよく過去の給食メニューをさかのぼって見てみると、1歳6か月までは離乳食後期食だったのでアジは提供されていませんでした。その後、幼児食にupしたので、いろんな食材が提供されるようになりました。もちろん卵、牛乳、小麦など、アレルギーの起こりやすいものは、離乳食提供段階で園から事前にお家で食べるように指示されており、これらは全てクリアしていました。なので”寝耳に水!”という感じでした。
3.友人・同僚からのアドバイス
小児科Drからは、小児科では採血するくらいでプリックテストまではしないとのこと。今後のこともあるので、近くのかかりつけを作っておいた方がいいかもとのことでした。確かに、私の大学病院に連れて行って自分で検査オーダーをしたらいいのですが、ちょっと娘ちゃんを連れていくには遠いので…。
同僚皮膚科Drからは、プリックテストをしても痛いわりに、結果が微妙だったら結局疑わしい食品は避けるという方針になる。園で必要ならば採血をするくらいが落としどころかなというアドバイスでした。
私が考えているのと同じような意見だったので一安心でした。やっぱり我が子のこととなるとやや冷静さを失うので、客観的なアドバイスは非常にありがたかったです。
4.自宅でアジのチャレンジテスト
平日土曜は私が大学院+バイトをしており園に預けているので、苦肉の策で日曜のお昼ご飯にアジを食べさせてみました。”どうせ出ても蕁麻疹くらいだし!”と思って…。皆さんマネしちゃだめです。本当は平日の病院診療時間の直前くらいが望ましいですよ。症状が出てすぐに医療機関に連れていけるように逆算してくださいね。
冷凍食品のアジフライがたまたまあったので、これをレンジでチンして、衣部分をとって、中のアジの身をほぐして、娘ちゃんの大好きなアンパンマンおうどんに混ぜてみました。入れた量は大さじ半分くらいです。
うまいこと娘ちゃんの口に入ってゴックンしたのを確認してから、数分後、あごと手の甲をボリボリ執拗に掻きだしました。むせているような感じで咳を繰り返しました。そして、口周りが徐々に赤くなり、あご~首にかけて直径5mm程度の明らかな膨疹がたくさん出てきました。そして手の甲~腕にかけても同様の皮疹が出てきました。娘ちゃんはひたすら不機嫌にかきむしっています。体幹には出ませんでした。
5.休日診療所へ
保冷剤をタオル1枚にくるんで首元を冷やしながら、さすがにこれ以上広がったり、呼吸苦が出たら大変。というか、”万が一にも死んだら困る!”ということで、休日診療所にTELして、直行しました。着いた頃には皮疹はだいぶ落ち着いていて、娘ちゃんもお昼寝の時間とかぶっていたので爆睡していました。小児科Drに聴診してもらうと、胸の音は大丈夫で一安心。とりあえずのニポラジンシロップを1日分いただいて帰宅しました。
6.まとめ
個人的には、アジで明らかなアレルギー反応が出た人に遭遇するのは初めてです。卵、牛乳、リンゴ、小麦、エビなどでは診療経験あります。また口腔アレルギー症候群(OAS)といって、特定の果物や野菜を食べたら口の中やのどがむずむずして苦しい感じがするという病気も結構あります。近年では成人発症の魚アレルギーはそれなりに患者さんがいます。ちなみに魚アレルギーの患者さんは”じゃ、肉食べときます。お寿司屋さん行けないなー”くらいな感じで終わることが多いです・・・。
一応RAST(ラスト)というアレルギー検査項目一覧にアジは載っているので、”それなりに患者もいるんだろうなー”とは思っていましたが、本当に娘ちゃんがなるとは思っていませんでした。ヒスタミンもそれなりに含有されてそうですが、南蛮焼きとアジフライはかなり加熱もしているし、2回ともヒスタミンが原因とは思えないので、アジそのものに反応したとしか思えません。ほかの食材とのアレルゲンの交差反応とか、どうなんでしょうか? これから文献検索していきます。
ちなみに、どんな検査をしようが、結局実際に食べて誘発されるならそれが犯人で確定です。採血は経時的な数値比較で、例えば卵だったら”そろそろつなぎに入っているのは食べてみたら―”という具合のアドバイスをしていきます。アジの場合は・・・また調べてみます。
なにか皆様のお役に立てる情報であれば幸いです。
皮膚科Dr!ちびでした。
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