手用の塗り薬の正しい塗り方|皮膚科医の患者指導

手の塗り薬 お肌のトラブル

こんにちは。

皮膚科Dr!ちびです。

今回は皮膚科医らしく、外用剤の塗り方についてお話しします。効果的に外用するのが治癒への近道です。以前に頭用の塗り薬についてお話ししましたが、次は”手荒れ用の塗り薬”についてです。

手荒れは辛いですよね。今はどこに行ってもアルコール消毒が必要ですし、一旦ひびわれると痛くて日常生活が辛くなります。小学生でもアトピー性皮膚炎がひどい子は手荒れがありますね。うちの子も子ども園で砂場遊びをした日はよく手が荒れています。

手に湿疹があると、かゆみ、赤み、ガサツキに対する治療として、おそらく皮膚科では”軟膏の塗り薬(主にステロイド系)”が処方されると思います。最近ではジェネリック(主成分は同じ後発品)が多いので、商品名は様々ですね。

ちび
ちび

たいがい、下の写真のような雰囲気の軟膏の塗り薬を処方します。ステロイドのランクは皮膚症状に応じて決めますので主治医にお任せください。

例:アンテベート軟膏の外観

”他院で処方されたが治らない”と訴えてくる患者さんも多いので、今一度、正しい塗り方を解説していきます。(診断が間違っていて実は”手の水虫だった”という場合もありますが、今回は割愛します)

1.イマイチな外用方法
2.正しい外用方法
3.皮膚科医が軟膏を出す理由
4.指の亀裂(あかぎれ)がなかなか治らない場合
5.結局1日何回塗ればいいのか
6.治ったけどすぐに繰り返す場合
7.まとめ

1.イマイチな外用方法

チューブからダンゴムシくらいの量を指先に出して、”赤みの強いところやあかぎれのところだけに薄く塗る”のはイマイチです。べたべたするのが嫌で、もしくはステロイドが怖いという過去のお話しのもと、薄く薄くのばして塗るのは、塗る手間のわりにさっぱり治りません。確かに若干よくなりますが、すべすべのもちもち肌には戻りません。

”ちょっとよくなって、まだガサガサだけど塗るのをやめる”のもイマイチです。私は初めて外用薬を処方する人には、必ず塗り方の実演をしておみせしています。忙しい時は看護師さんに指導をお願いすることもあります。

2.正しい外用方法

・両手の指全体に塗り広げる場合。

指先から第1関節までの長さでチューブから軟膏を押し出します。それを両手の指でアライグマが手を洗うかのように、軟膏をすべての指にゆっくりと摩擦を最小限にしてなすりつけます。意外とべたべたしますが、これが必要十分な量です。

・指だけでなく、手のひら手の甲にも塗り広げる場合。

軟膏の量を指先から第2関節までに増やしましょう。それをやっぱり、アライグマが手を洗うかのように、軟膏をすべての指と手のひら、手の甲にゆっくりと、摩擦を最小限にしてなすりつけます。

3.皮膚科医が軟膏を出す理由

なぜ軟膏基剤で処方するかというと、軟膏基剤が最も皮膚に浸透しやすいからです。ただべたつきがどうしても受け入れられない患者さんもいらっしゃるので、そこは臨機応変にクリーム基剤の塗り薬を処方することもあります。塗ってもらえるのが一番なので、べたつきがイヤという方は主治医にご相談ください。”寝る前だけ軟膏で、朝はクリームで”という使い分けをすることも良くあります。

ちなみに、ローションタイプは刺激でピリピリすることがあるのであまり処方しませんが、クリームでもべたべたが気になって困るという方は、一度主治医にご相談ください。

4.指の亀裂(あかぎれ)がなかなか治らない場合

亀裂は痛いですよね。亀裂は傷なので、安静に保つと治ります。ただし、指関節部の亀裂は治りかけてもまた指を曲げるときに、パックリ割れたりしますし、かゆくて無意識にこすってまたパックリ割れたりもします。パックリ割れを繰り返している人は、割れ目の両端が硬くなって崖のようになっています。こうなると本当になかなか治りません。

そこで、おすすめは、テーピングです。傷パワーパッド的なものでも良いのですが、上手に使わないと通気性がイマイチで、ふやけすぎてしまうことが難点です。薬を塗ろうと思うと一旦剥がす必要があって、費用もそれなりにかかります。

そこで、私が使っているのは、3Mマイクロポアのサージカルテープです。

3Mマイクロポアサージカルテープ
3Mマイクロポア サージカルテープ

この茶色いテープはレーヨン不織布でできていて、触り心地は和紙のようです。シミのレーザー治療後の傷に貼りっぱなしにするなど、幅広く使われています。1週間程度の長期間貼ったままでも経験上かぶれを起こしにくいです。貼ったまま上から軟膏を塗ることもできます。

この私なりの使い方は別記事に詳しく記載する予定ですので、是非ご覧ください。

5.結局1日何回塗ればいいのか?

症状にもよりますが基本的には1日2回の外用を指示されると思います。とはいえ、皆さんお忙しいので、実際は1日1回きちんと塗って、あとの1回は雑に塗るというのが現実的です。

きちんと塗るタイミングは、もう手の指を使わない寝る直前が最適です。枕元に塗り薬を置いて、布団に入って手に塗り薬を塗ってそのまま寝てしまいましょう。塗り薬を塗ってからビニール手袋や綿の手袋をする、密封療法もお勧めです。寝ている間にしっかり薬が皮膚に浸透しますし、寝ている間に無意識に引っ掻くのを予防してくれます。布団やシーツが軟膏でべたべたになるのを気にされる方にもおすすめです。

雑に塗る1回は、朝に出かける直前をお勧めします。玄関に軟膏を置いておいて、荷物を全部持ってから薄くでいいので、べたべたが気にならない程度に塗って出かけましょう。

6.治ったけどすぐに繰り返す場合

よく患者様からの訴えで”教えてもらった量で塗ったら治るんですけど、塗るのをやめたらすぐにまた荒れてくる”というものがあります。原因は大きく2つあります。

1つ目は”治っていないのに塗るのをやめた”場合。ちょっと亀裂に皮が張った、ざらざらだけど痒みだけましになった、赤みが少し減った、など。これ、まだ治っていません。手のモデルさんにでもなれるかのようなもちもち肌に戻るまでは連日外用を続ける必要があります。

2つ目は”手荒れの原因が取り除かれていない”場合。金属アレルギーや触れている物にかぶれている場合(洗剤など)、手袋で物理的に擦れている場合があります。よくあるのが美容師さんの手荒れ、介護職の方の手荒れです。原因を除くのが完治への第一歩ですが、仕事柄難しい方も一定数いらっしゃいます。その場合は、ステロイド外用とステロイド以外の軟膏(プロトピック軟膏やコレクチム軟膏)を併用しながら、必要最低限の塗り薬で良い状態をキープする、プロアクティブ療法という考え方があります。こちらも別記事に詳しく記載する予定ですので、ご覧ください。

7.まとめ

処方薬を塗っても治らない場合、ある一定の割合で、上手に外用できていない患者さんがいます。特に日常生活で酷使する手の外用は難しいです。皮膚科を受診する時のポイントは、外用薬の塗り方をしっかり教えてもらうことです。できれば看護師さんに実際に塗ってもらうのをおススメします(ただ、病院やクリニックの方針によっては、限られた診察時間内では外用指導できない場合もあります)。これをお家で実践すると、大概の湿疹は一旦治ります。

上手に塗っているのに治らない場合に初めて、特殊な病気を疑って検査を進めたり、総合病院へ紹介したりするのが、通常の診療の流れです。

ちび
ちび

残念ながら今のところ、1回塗るだけで治るような魔法の塗り薬はございません・・・。まずは効果的に外用できるようになりましょう。

なにか皆様のお役に立てる情報であれば幸いです。
皮膚科Dr!ちびでした


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