頭用の塗り薬の正しい塗り方|皮膚科医の患者指導

頭の塗り方 お肌のトラブル

こんにちは。

皮膚科Dr!ちびです。

今回は皮膚科医らしく、外用剤の塗り方についてお話しします。効果的に外用するのが治癒への近道です。まずは”頭用の塗り薬”についてです。

頭に湿疹があると、かゆみ、赤み、ガサツキに対する治療として、おそらく皮膚科では”ローションの塗り薬(主にステロイド系)”が処方されると思います。これは目薬みたいな形をしています。ノズルの先端はかなり短めです。

ちび
ちび

たいがい、下の写真のような雰囲気のローションの塗り薬を処方します。ステロイドのランクは皮膚症状に応じて決めますので主治医にお任せください。

例:アンテベートローションの外観

”他院で処方されたが治らない”と訴えてくる患者さんも多いので、今一度、正しい塗り方を解説していきます。

1.イマイチな外用方法
2.正しい外用方法
3.皮膚科医がローションを出す理由
4.頭の分厚いガサツキが取れない場合
5.結局1日何回塗ればいいのか
6.コムクロシャンプーというステロイド外用剤
7.まとめ

1.イマイチな外用方法

容器をそのままひっくり返して、直接頭にノズルを付けるのはイマイチです。これは髪の毛にくっつくだけで、なんなら髪の毛を伝って液が落ちます。おでこや首まで垂れてくることもあります。不必要な場所にもついてしまうのは副作用の意味でよくないです。また、塗っている実感がないので、1回で1本使い切ってしまった患者さんもいました。私は初めて頭の外用薬を処方する人には、必ず塗り方の実演をしておみせしています。忙しい時は看護師さんに指導をお願いすることもあります。

2.正しい外用方法

手のひらにローションを出します。出す量は塗る範囲の大きさによりますが、500円玉くらいの大きさを出せば十分です。それを、反対の手の指先につけて、髪の毛をかき分けて頭皮に直接塗ります。正直、私も自分の頭に上手に塗れる自信はありません。家族がいるならだれかに塗ってもらった方が、はるかに効率的で治る可能性も高まります。

3.皮膚科医がローションを出す理由

なぜローション基剤で処方するかというと、毛の多いところは、クリームや軟膏ではべたべたしすぎて塗りにくいからです。ただそれだけです。直接容器から頭皮に塗りやすいように処方しているわけでは決してありません。ローションでさえ”べたついてイヤ!”という患者さんもいます。アトピーなどの慢性疾患の患者さんには”週末だけでもしっかり塗ってね”、という説明をすることさえあります。

4.頭の分厚いガサツキが取れない場合

個人的には、アトピー性皮膚炎のように頭に強い赤みがあって分厚いフケのようなものがこびりついている場合は、ローションではなく、クリーム基剤の塗り薬を処方します。べたべたしますが、ローションよりも肌への浸透が良いので効果は高めです。また、尋常性乾癬という病気のような頭に分厚い鱗屑がある場合は、オリブ油を処方します。お風呂の15分~30分前に頭にオリブ油をべたべたにつけて、フケを浮かせて、お風呂でご自身のシャンプーを使って洗い流してもらっています。その後、お風呂上りにローション基剤の外用をしてもらいます。週2回ほどオリブ油をつけることで上手に皮膚症状をコントロールできる人が多いです。

5.結局1日何回塗ればいいのか?

1日2回塗ったほうが効果は高いですが、経験上、どんなモチベーションの高い人でも自宅で1日1回塗るのが限界です。というのも、塗るのに頭だけでも数分かかります。朝の忙しい準備の合間にそんな時間ってなかなか取れないものです。なので、基本的には夕方~寝る前のお風呂上がりに1回、丁寧に塗ることをお勧めしています。

ただし、円形脱毛症の人は、脱毛部に塗るので、べたつきがそれほど気にならず、治療のモチベーションも高いので、1日2回の外用をお勧めしています。どの場所にどれくらいの量を塗るかは、疾患や病変の範囲によってバラバラですので、受診してきちんと皮膚科医に外用範囲を教えてもらってください。

6.コムクロシャンプーというステロイド外用剤

最近はコムクロシャンプーという、お風呂前の約15分間、頭に塗ったままキープして、お風呂でシャンプーのように流す、という製品も出ています。べたべたに頭皮に塗りますが、最終的には洗い流すので、すっきりさっぱりするというものです。最強クラス(strongest)のステロイド剤ですが、ショートコンタクト(短期間だけ皮膚にとどめて吸収させる)なので、副作用が少ないという利点があります。もともとは尋常性乾癬という病気の頭皮のみに適応があったのですが、2021年2月下旬より、単なる頭皮湿疹にも適応拡大されました。こちらも処方するタイプのものなので、薬局には売っていませんのでご了承ください。

コムクロシャンプーの外観

7.まとめ

処方薬を塗っても治らない場合、ある一定の割合で、上手に外用できていない患者さんがいます。特に頭の外用は難しいです。皮膚科を受診する時のポイントは、外用薬の塗り方をしっかり教えてもらうことです。できれば看護師さんに実際に塗ってもらうのをおススメします(ただ、病院やクリニックの方針によっては、限られた診察時間内では外用指導できない場合もあります)。これをお家で実践すると、大概の湿疹は一旦治ります。上手に塗っているのに治らない場合に初めて、特殊な病気を疑って検査を進めたり、総合病院へ紹介したりするのが、通常の診療の流れです。

ちび
ちび

なので、まずは指示通りに外用できることが大前提です。残念ながら今のところ、1回塗るだけで治るような魔法の塗り薬はございませんので・・・。

なにか皆様のお役に立てる情報であれば幸いです。
皮膚科Dr!ちびでした。


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