総合病院の皮膚科医が入院患者で診ている疾患

お肌のトラブル

こんにちは。

皮膚科Dr!ちびです。

今回は、皮膚科医らしく、皮膚科で入院が必要な疾患って何があるのかについてお話しします。

私は初期研修医を終えて、皮膚科に入局し、関連病院で研修を数年した後、大学院生として紆余曲折の末、dryのラボ(細胞やマウスを用いるのがwet、PC上でデータ解析を主に行うのがdry(業界用語?) )に所属しています。(参考:育児との両立のため、時短的な大学院生活を固持して思うこと)。

製薬会社主催の勉強会とかに参加すると、タクシーチケットをもらってタクシーで帰ることも多々あります。タクシーの運転手さんは心得たもので、タクシーチケットをお見せすると、こちらが何も言わずとも医者と判別されることが多いです。”何科の先生ですか?”という話題が圧倒的に多いんですよね。そこで”皮膚科です”と答えると、いわゆる診療相談が始まります。(本当に疲れている時は話しかけられないように、行き先を告げた次の瞬間から眠ったふりをしています。)

そこでよく”皮膚科の入院ってどんな病気をみてるんですか?”と聞かれるので、今回は軽くまとめてみました。

ちび
ちび

皮膚科って、一般の方からすると蕁麻疹とか水虫とかしか診ていないイメージがあるらしく…。名誉挽回のため、しっかり診療していることを示したいと思います!

1.皮膚悪性・良性腫瘍の手術
2.皮膚悪性腫瘍の化学療法
3.皮膚感染症
4.皮膚潰瘍
5.自己免疫性水疱症、重症薬疹
6.膠原病
7.薬剤アレルギー検査、ステロイドパルス、光線テスト

1.皮膚悪性・良性腫瘍の手術

良性だと、粉瘤脂肪腫が多いです。サイズが小さいと外来の日帰り手術で対応できますが、脂肪腫は手のひら位の大きさまで放置されて手術を希望される方がいらっしゃいます。そのサイズになると、局所麻酔が効きにくいため、全身麻酔の手術となります。なので入院が必要。

悪性腫瘍だと、メラノーマ(悪性黒色腫)が一番厄介です。腫瘍より大きめに皮膚を切除する必要があり、単純縫合するには皮膚を寄せきれないため、人工真皮移植が必要となります。その後、2期的に人工真皮を外して植皮する手術をします。局所麻酔でも患者さんが頑張れれば対応できるかもしれませんが、局所麻酔って結局、手術部位のサイズが小さい事と、手術時間が1時間半以内で終わることが条件です。1時間も手術台の上であーだこーだされるのは患者さんがしんどいです。なので全身麻酔。なので入院。

有棘細胞癌とか基底細胞癌とか、顔にできやすいタイプの悪性腫瘍は、切除後に皮膚欠損部の再建(つまり皮弁)しなければならないので、結構時間がかかります。これも患者さんが頑張れば局所麻酔でできますが、意識のある中で顔を長い時間いじられるのは耐えられるかどうか…。

2.皮膚悪性腫瘍の化学療法など

皮膚悪性腫瘍は取り切って終わりというパターンと、術後補助療法が必要な場合があります。さらに手術適応がなく化学療法から入るパターンもあります。(これは病理結果やリンパ節転移の有無によって個々に異なりますので詳細は割愛します。)術後補助療法や化学療法が必要な場合、初回は副作用モニタリングのため、入院で対応します。2回目以降はレジメンにもよりますが、外来化学療法室で対応してもらえる施設も増えてきました。

あとは、メラノーマや血管肉腫といった悪性度の強い皮膚がんの場合、最期をみとることが多いです。ほかの内臓のがんと同様に、各種臓器へ転移し、最期は倦怠感で寝たきり状態となり、肺や脳転移部からの出血で一気に死を迎えることもあります。皮膚リンパ腫の中でも悪性度の強いものは、皮膚のあちこちに出来た腫瘍が、自壊し潰瘍化し、痛みと臭いとで大変な中、死を迎えます。特に皮膚リンパ腫は、大学病院で死を迎える方が多いです(ホスピスなどは皮膚処置が出来ないという理由で、経験上受け入れてくれません)。

3. 皮膚感染症

蜂窩織炎、壊死性菌膜炎、帯状疱疹、カポジ水痘様発疹症など。いわゆる抗生剤や抗ウイルス剤の点滴加療が必要な病気です。帯状疱疹は顔に出た場合は、日常生活が困難となることが多く、入院して安静を保ち皮膚処置をしながらの抗ウイルス薬の点滴加療を行います(その他の部位の帯状疱疹では基本的には外来で内服加療を行います)。壊死性菌膜炎は、死に至ることのある病気です。

4. 皮膚潰瘍

皮膚に傷がついて、全然ふさがらないというのが、難治性の皮膚潰瘍です。とくに下肢に出来ることが多いです。原因は様々ありますが、治療するには安静してやや下肢挙上する事(むくみ予防)です。自宅にいてはどうしても立って歩いてしまうので、治りが遅くなります。入院して週3回ほど担当医が皮膚潰瘍部の処置をすると、ある程度改善します。外来通院でも改善しそうだなというところまで治ればいったん退院です。

5. 自己免疫性水疱症、重症薬疹

世の中には、体中の皮膚に水ぶくれができる病気(自己免疫性水疱症)があります。高齢者に多いです。ごくごく軽症だと外来通院で治療できますが、一般的には入院して初期治療を行い寛解に持ち込みます。というか、水ぶくれが多発すると日常生活に支障が出るので、むしろ入院させてくれという訴えるご家族さんが多いです。口の中もただれることがあるので、食事面でも入院でのサポートが必要となります。

重症薬疹は、全身の皮がむけたり、目が充血したり、口の中がただれたりするものです。自力で動くことが難しくなりますので、とりあえず入院です。ガツンと治療していきますが、もともと心臓病や腎臓病などの持病をお持ちの方は亡くなる方もいらっしゃいます。

6. 膠原病

膠原病をどの診療科がメインでみるのかは、施設によって異なりますが、皮膚症状がメインの場合、皮膚科で診る場合も多いです。軽症であれば外来で診ますが、それ以上になると入院してステロイドや免疫抑制剤などを試していきます。膠原病というのは合併症(心臓・肺・腎臓など)が多すぎるので、皮膚科であれば大学病院で診ることが一般的です。

7 薬剤アレルギー検査、ステロイドパルス、光線テスト

薬剤アレルギー検査は、数種類の薬剤のプリックテストなどを行うものです。アナフィラキシーの危険性があるので、短期入院をした方が安全です。ステロイドパルスは、今までに述べた疾患以外にも、円形脱毛症や尋常性白斑などの良性疾患でも行うことがあります。初回はやはり副作用チェックのため、入院で行います。光線テスト光線過敏症を疑われる患者さんに対して、UVAやUVBや可視光線をあてて、皮膚が赤くなるかどうかを調べる検査です。外来でやるには時間がかかること、あててから判定するまでの間は遮光しないといけないことから、入院管理で行った方が正確です。

8. まとめ

というわけで、皮膚科入院をとっている大きな病院の皮膚科に、近くのクリニックで対応できそうなことでは受診するのはどうかなと個人的には思います。診ている疾患とやっている治療が全然違うということをご理解いただきたいですm(__)m。総合病院とクリニックとの良い意味での役割分担です(これが国の方針!)。塗り薬と、頻回な採血不要な飲み薬だけの治療となれば、近くのクリニックに逆紹介させていただくこともご理解いただきたいです。

ちび
ちび

もちろん上記は一例であり、書ききれないほかの疾患も結構診ていますよ。

近くの皮膚科クリニックではなかなか治らないような湿疹などを精査するもの大病院の仕事ですので、遠慮せず、今までの治療歴の記載された紹介状を持ってきてください。

なにか皆様のお役に立てる情報であれば幸いです。
皮膚科Dr!ちびでした。

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